【開始まで1ヶ月】教育現場で起きている小学校プログラミング教育の大きな課題

【開始まで1ヶ月】教育現場で起きている小学校プログラミング教育の大きな課題

文部科学省では、2020年度からのプログラミング教育の全面実施に向けて、教員に対してプログラミング教育の研修が行われている。

しかし、研修に参加した教員、また教育現場の最前線に立つ教員の意見からは様々な現実と、プログラミング教育に対しての課題が浮き彫りになっている。

プログラミング教育に対してどういった課題があるのか、その現実を学校目線でみていきたい。

目次

プログラミング教育の目的とは?

プログラミング教育の目的は「論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成」である。

参考元:文部科学省 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について

論理的思考能力や想像力、問題解決力に、プログラミング教育がどう生かされるのかと思う人も少なくない。

文部科学省によれば「身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと」とのことである。

つまり、プログラミング教育とは「問題が起きた時に論理的思考能力や想像力を用いて、パソコンやスマートフォンなどのコンピュータを活用することにより、問題解決に導く手法を得るための教育」ということである。

プログラミング教育の主な内容

プログラミング教育の内容は主に4つ(A分類、B分類、C分類、D分類)に分かれている。

A分類:学習指導要領で例示されている科目

A分類は「学習指導要領に例示されている単位等で実施するもの」にあたり、算数や理科、総合的な学習の時間などがある。

具体的にどう取り入れられるかというと、算数の授業の中では「プログラミングを通して、正三角形の意味をもとに正三角形を書く」という内容だ。

B分類:学習指導要領で例示されていない科目

B分類は「学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの」にあたり、音楽や社会、家庭などがある。

具体的にどう取り入れられるかというと、音楽の授業の中では「様々なリズム・パターンを組み合わせて音楽をつくることをプログラミングを通して学習する」という内容になる。

C分類:各教科等とは別に実施するもの

C分類になると「教育課程内で各教科等とは別に実施するもの」となり、その内容は「プログラミングの楽しさや面白さ、達成感などを味わえる題材などでプログラミングを体験する」や「各教科等におけるプログラミングに関する学習活動の実施に先立って、プログラミング言語やプログラミング 技能の基礎についての学習を実施する」といったことになる。

D分類:特定の児童を対象とする活動

D分類になると、クラブ活動など特定の児童を対象として実施する教育となっている。

つまり、プログラミング教育の大半は、算数や音楽などの授業の中に取り入れられ、問題の解決に必要な手順を学んでいこうという内容となっている。

参考元:「小学校プログラミング教育の手引」の改訂(第二版)

プログラミング教育の課題

プログラミング教育を行ううえでの課題として様々なことがある。

コンピュータの機材などのハード面の課題や教育水準の問題などである。

そういった問題点を詳しくみていこう。

機材などのハード面における課題

プログラミング教育におけるコンピュータの教材やソフトは文部科学省で定められている。

しかし、学校によってはそれを動かすことのできるパソコンや機材などが揃っていない、または数が少ないといった問題が多発している。

実際に現場の教員に話を聞くと、「文部科学省のプログラミング教育についての研修資料に沿って研修を行おうとしたところ、パソコにインストールされているブラウザーがソフトに適合せずにソフトを立ち上げることすらできなかった」ということである。

私物でなく、自治体から各学校に配布されたパソコンなので、勝手にインストールするわけにもいかず、プログラミング教育の準備すらできない可能性がある。

最新の機材を取り入れている学校もあるが、そうではない古い機材を使っている学校もたくさんある。

そういった機材やハード面での格差問題が指摘されている。

具体例:電子黒板

電子黒板はプログラミング教育をするうえで必須の機材である。

電子黒板がないと、教員の操作しているパソコンを生徒に見せることができない。

ひとりひとり周ってパソコンを操作する手順を教えるよりも、電子黒板で操作の仕方を見せたほうがよっぽど効率的だ。

授業の進み方にも違いが出てくる。

ところが、ある学校では電子黒板が学校に一台しかない。

そういった場合は、電子黒板を使う教室に運び、パソコンの画面が電子黒板に映し出されるようにセッティングしなければならない。

これを、休み時間のわずか10分の間に行わなければならないのである。

そういった機材やハード面での格差は、教える側の教員に重くのしかかってきてしまい、教わる側の児童にも教育水準の違いという形で影響を及ぼすことになる。

具体例:パソコン

今までのような国語や算数の教材は、文部科学省が検定した教科書によって授業が行われていた。

学校によって採用する教科書の違いはあるが、一定の教育水準が保たれるように文部科学省によって検定しているので、教育にそこまで差がでることはない。

ただし、プログラミング教育となるとまた別問題だ。

文部科学省が採用したパソコンソフトを使うというが、同じ県内でも一人に一台パソコンを与えられている学校と、そうでない学校とでは明らかに授業内容や生徒の授業への取り組み方に差が生まれる。

自分でパソコンを使ってプログラミングの学習が意欲的にできる学校と、人がパソコンを操作するのを見ているだけの学校とで違いが出てくる。

そういった授業内容、教育格差の問題は避けられない。

プログラミング教育の研修などソフト面における課題

プログラミング教育においての問題は、機材などのハード面の問題ばかりではない。

教える学校側でも、その内容を認識している学校と、認識していない学校と分かれている。

積極的にプログラミング教育を取り入れ実行しようとしている自治体では、各学校に対して研修を行っているが、そうでない自治体では研修すら行っておらず、プログラミング教育の資料を配布しているだけの場合もある。

研修を行っている学校とそうでない学校とでは、教える側の教員においてプログラミング教育の認識や知識に差が出てきてしまい、教わる側の子供たちの教育水準に差が出てきてしまう。

同じ県内でも違う自治体に生まれたというだけで、受けることのできる授業内容が違うということは、子供の問題ではない。

文部科学省によるプログラミング教育への取り組み

多くの課題があるからといって、決してプログラミング教育が間違っているかといえばそうではない。

むしろ、コンピュータやAIが発達していくであろう、これからの時代に備えて推奨していくべき教育内容である。

プログラミング教育をすることにより、子供の将来の選択肢を広げることは紛れもない事実だ。

では文部科学省では、様々な課題をどのようにみて、どのような取り組みをしているのだろうかということをみていきたい。

プログラミング教育においての課題の調査

文部科学省の調査によれば、「小学校のプログラミング教育に向けて令和元年度末までに教員1人以上に実践的な研修を実施、又は教員が授業の実践や模擬授業を実施済み・実施予定の教育委員会」は93%である。

ところが、7%の教育委員会が現段階においても、「最低限必要と考えられる指導体制の基礎が整っていない」と回答している。

参考元:令和元年度 市町村教育委員会における小学校プログラミング教育に関する取組状況等調査の結果について

この数字を多いとみるか少ないとみるかは、文部科学省や自治体の考えによるだろうが、ある学校ではプログラミング教育を受けることができて、ある学校では受けることができないといったようなことが起こってはならない。

プログラミング教育においての課題への取り組み

文部科学省ではプログラミング教育においての課題への取り組みとして、「最低限必要と考えられる指導体制の基礎が整っていない自治体等へのヒアリング等を行い、より詳しい状況を確認する」としている。

そして、「必要に応じて当該地域でのセミナー開催や、教員研修用教材等の提供などを実施する」とのことだ。

また、2020年度からプログラミング教育の全面実施に向け、プログラミング教育の実践事例やセミナー等を開催していく予定だ。

もう2020年度は目の前に迫っている。

果たして今の状態で、プログラミング教育を実施できるのかということは疑問に残るが、プログラミング教育を全面実施するためには、文部科学省と各学校や自治体が上手く連携をとり、課題を解決できるかにかかっている。

次の時代に向けた取り組み、プログラミング教育を実施できるかどうかは子供の問題ではなく、それを実施しようとする大人の問題なのだ。

まとめ :プログラミング教育が実を結ぶには機材の確保や研修への取り組みが重要

2020年からのプログラミング教育の全面実施に向けて、様々な課題が浮き彫りとなっている。

特に、機材などのハード面や、教員に対する研修などソフト面における課題は、プログラミング教育の教育水準に直結する課題であるため、早急に対応が必要だ。

ところが、自治体の動きが鈍く、現実にはその課題が解決しているとはいえない。

その課題をしっかりと受け止め、解決することにより、子供の将来の選択肢を広げることにも繋がるプログラミング教育という素晴らしい取り組みが実を結び、日本の将来に繋がっていくのである。

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この記事を書いた人

教育教材メーカー勤務の36歳、文系の学部卒。
10歳になる息子と9歳になる娘、愛する妻、愛犬のシーズー♂の4人+1匹家族。
息子は小学1年生から、娘は年長(5歳)からロボット教室へ通わせています。
最近は子どもたちよりロボットプログラミングに夢中?

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